○上田市中小企業・小規模企業振興条例

令和2年3月30日

条例第7号

上田市は、菅平高原や美ヶ原高原、里山の緑に溢れ、千曲川の清流に育まれた自然豊かな地域であり、数多くの歴史的文化遺産や特色ある伝統行事、由緒ある温泉など個性が際立つ豊富な地域資源を有している。

奈良時代には信濃国分寺が置かれ、この地が政治・経済・文化の中心であったといわれており、戦国時代には真田氏が発祥し、城下町が形成された。明治期以降は、養蚕業の発展とともに全国有数の蚕種の生産地となり、日本の蚕糸業を支える「蚕都」として隆盛を極めた。

蚕糸業や戦時中の疎開企業により培われた技術的基盤や進取の精神は、現在、機械金属加工や輸送関連機器、精密電気機器などに受け継がれ、製造業を中心に商業、工業、農業及び観光といった産業のバランスのとれた都市として着実な発展を遂げてきており、大学等による人材育成や産学官金連携の取組も盛んに行われている。

この発展を支えてきたのが地域の中小企業及び小規模企業であり、地域に根差したさまざまな事業活動により、優れた製品やサービスの提供、雇用の創出とともに、地域行事への参加や教育面における貢献など、地域経済やまちづくりを牽引する大きな役割を果たしている。

今後、人口減少が進む中で、地域が持続的発展を遂げていくためには、中小企業及び小規模企業が、経済や社会情勢の変化に柔軟に対応しながら、個々の強みを発揮して付加価値を向上させ、未来を切り開いていくことが重要である。また、市民生活の基盤となる雇用や安定した所得を生み出し、この地域に住んで良かったという「生きがい」、「豊かさ」を創造する地域づくりのためには、中小企業及び小規模企業の活躍が不可欠である。

このため、中小企業者及び小規模企業者による経営の改善及び向上に向けた自主的な努力を促し、持てる力を存分に発揮できるよう、行政、中小企業関係団体等、大企業者、教育機関等、金融機関等及び市民が中小企業及び小規模企業の重要性を共有し、連携・協力して支援を行うことが必要である。

ここに、中小企業及び小規模企業の振興を市政の重要課題として位置付け、地域社会が一体となって取り組むため、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、中小企業(小規模企業を含む。以下同じ。)の振興について、基本理念を定め、市の責務、中小企業者の努力等を明らかにするとともに、中小企業の振興に関する施策の基本となる事項を定めることにより、中小企業の振興に関する施策を総合的に推進し、もって本市経済の持続的な発展及び市民生活の向上に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 中小企業者 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第1項各号に掲げる者で、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(2) 小規模企業者 中小企業者のうち、中小企業基本法第2条第5項に規定する小規模企業者で、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(3) 中小企業関係団体等 商工会議所、商工会、長野県中小企業団体中央会、商店街振興組合その他の中小企業の支援を行う団体及び一般財団法人浅間リサーチエクステンションセンターをいう。

(4) 大企業者 中小企業者以外の事業者(金融機関等を除く。)で、市内において事業活動を行うものをいう。

(5) 教育機関等 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校その他職業に必要な能力を育成する機関をいう。

(6) 金融機関等 銀行、信用金庫、信用協同組合その他の金融機関及び長野県信用保証協会をいう。

(7) 市民 市内に居住し、通勤し、又は通学する者をいう。

(基本理念)

第3条 中小企業の振興は、中小企業者による経営基盤の強化及び経営の革新を図るための創意工夫と自主的な努力を促進することを基本として推進されなければならない。

2 中小企業の振興は、中小企業者が多様な分野における特色ある事業活動を通じて、地域の経済及び雇用を支え、市民生活の向上に重要な役割を果たしているという認識の下に行われなければならない。

3 中小企業の振興は、市、国、県、中小企業者、中小企業関係団体等、大企業者、教育機関等及び金融機関等が相互に連携及び協力するとともに、市民の協力を得て推進されなければならない。

4 小規模企業の振興は、小規模企業者の経営の規模及び形態を踏まえ、その経営資源の有効な活用が図られるとともに、多様な主体との連携及び協力により、その事業の持続的な発展につながるように推進されなければならない。

(市の責務)

第4条 市は、基本理念に基づき、産業構造を踏まえた上で中小企業の振興に関する施策を総合的に策定し、及び実施するものとする。

2 市は、中小企業の振興に関する施策の推進に当たっては、必要な情報の収集及び提供を行うとともに、中小企業者、中小企業関係団体等、大企業者、教育機関等及び金融機関等の連携が積極的に行われるよう努めるものとする。

3 市は、工事の発注並びに物品及び役務の調達に当たっては、予算の適正な執行及び透明かつ公正な競争に留意しつつ、中小企業者の受注機会の増大に配慮するものとする。

(中小企業者の努力)

第5条 中小企業者は、基本理念に基づき、経済的社会的環境の変化に即応し、その事業の持続可能な成長と発展を図るため、主体的かつ積極的に経営基盤の強化及び経営の革新に努めるものとする。

2 中小企業者は、地域社会を構成する一員としての社会的責任を自覚し、地域づくりに積極的に取り組むとともに、環境との調和に配慮し、地域社会の維持及び発展に寄与するよう努めるものとする。

3 中小企業者は、中小企業者間並びに行政、中小企業関係団体等、金融機関等及び大学その他の研究機関との連携を図るよう努めるものとする。

4 中小企業者は、雇用機会の確保及び人材の育成を図るとともに、従業員が生きがいと働きがいを得ることができる労働環境の整備に努めるものとする。

5 中小企業者は、地域の将来を担う児童、生徒及び学生(第8条第1項において「学生等」という。)に対し、職業体験の機会の提供その他の活動により、勤労観及び職業観の育成に努めるものとする。

6 中小企業者は、市内の経済循環を促進するため、市内で生産、製造及び加工される製品並びに提供されるサービスの利用に努めるものとする。

7 中小企業者は、経営能力の向上を図るため、中小企業関係団体等へ積極的に加入するよう努めるものとする。

(中小企業関係団体等の役割)

第6条 中小企業関係団体等は、自らの専門性の高い知識を生かし、中小企業者の経営基盤の強化及び経営の革新並びに創業に対して、主体的かつ積極的に支援するとともに、市が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(大企業者の役割)

第7条 大企業者は、中小企業の振興が市内経済の発展や地域づくりにおいて果たす役割の重要性を理解し、市が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(教育機関等の役割)

第8条 教育機関等は、勤労観及び職業観の育成並びに地域の産業に関する学習その他の活動を通じて中小企業の事業活動による本市の発展への貢献について学生等に理解を促すとともに、中小企業者と連携して地域の将来を担う人材の育成に努めるものとする。

2 大学その他の研究機関は、研究開発及びその成果の普及における取組を通じて中小企業の成長発展に協力するとともに、中小企業者が行う新技術及び新商品の開発等に対する取組並びに人材の育成に協力するよう努めるものとする。

(金融機関等の役割)

第9条 金融機関等は、円滑な資金の供給、経営相談その他の方法を通じて中小企業者が経営基盤の強化及び経営の革新並びに創業に取り組むことができるように支援するとともに、市が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(市民の理解と協力)

第10条 市民は、中小企業の振興が地域経済の発展及び市民生活の向上に果たす役割の重要性を理解し、市内で生産、製造及び加工される製品の購入並びに提供されるサービスの利用を通じて中小企業の健全な発展に協力するよう努めるものとする。

(施策の基本方針)

第11条 市は、次に掲げる基本方針に基づき、中小企業の振興に関する施策を策定するものとする。

(1) 経営の安定及び改善を促進すること。

(2) 経済・社会情勢の変化に適応した支援を行うこと。

(3) 生産性の向上及びサービスの効率化により事業の付加価値を高めること。

(4) 人材の育成、確保及び定着並びに多様な人材が活躍できる雇用の創出を促進すること。

(5) 円滑な資金調達を推進すること。

(6) 産学官金の連携を推進すること。

(7) 創業を促進すること。

(8) 労働環境の改善を促進すること。

(9) 円滑な事業承継を促進すること。

(10) 中小企業の振興に資する情報発信を充実すること。

(11) 地域資源の利活用による産業の活性化及び新産業創出を促進すること。

(12) その他中小企業の振興に関し市長が必要と認めること。

(意見の聴取等)

第12条 市は、中小企業の振興に関する施策の推進に当たっては、中小企業をはじめとする関係者の意見を聴く機会を設け、施策の推進状況を検証するとともに、効果的な施策の実施に向けた検討を行い、公表するものとする。

(財政上の措置)

第13条 市は、中小企業の振興に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

この条例は、令和2年4月1日から施行する。

上田市中小企業・小規模企業振興条例

令和2年3月30日 条例第7号

(令和2年4月1日施行)