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上田市人権施策基本方針第一次改訂全文

更新日:2019年12月12日更新
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はじめに

 上田市では、平成18年3月6日に新上田市としてスタートして以来、平成19年に「上田市人権尊重のまちづくり条例」を制定し、その後「上田市人権施策基本方針」を策定して、人権が尊重される上田市を目指してさまざまな取組を進めてきました。また、教育委員会としての「上田市人権同和教育の基本方針」を平成21年に制定し、学校、家庭、地域、企業・職場などにおいて、市民協働のもとに人権教育と啓発を進めてまいりました。
 市では、上田市人権施策基本方針にある基本計画が平成24年度で終了することから「上田市人権同和教育の基本方針」と併せて見直し、より充実した人権施策を進めるために平成24年2月に上田市人権尊重まちづくり審議会に対して、「上田市人権施策基本方針」の改定について諮問しました。
 改定に当たり、平成24年5月に「人権に関する意識調査」を実施し、市民の関心度や実体にあわせた課題や施策を検討し、平成25年2月に答申をいただき、第一次改訂となる「上田市人権施策基本方針」を策定しました。
 今日、少子高齢化、高度情報化、経済の長期低迷および家族形態の多様化などにより、人間関係の希薄化や生活環境の変化によるさまざまな人権課題に対応した適時適切な施策を図ることが求められています。
 今後、この人権施策基本方針に基づいて各分野にわたる施策の推進を、行政運営の重要課題と位置づけ、基本理念である「一人ひとりの人権が尊重される社会を実現する」ことを旨に市民の皆様と協働して取り組んでまいりますので、一層の御理解、御協力をお願いいたします。
 本指針の改訂に携わっていただきました審議会委員の皆様、御意見や御助言をいただいた多くの市民の皆様に厚くお礼申し上げます。

平成25年3月

上田市長 母袋創一

第1章 基本的事項

1 基本方針策定の趣旨

 上田市では、平成18年(2006年)3月6日の合併にともない、新市として人権施策の統一を図るため、平成20年(2008年)に「上田市人権施策基本方針」を策定し、これに基づき平成24年度(2012年度)までの5か年の基本計画に沿って分野ごとにさまざまな人権施策を総合的に展開してきました。
 また、市教育委員会は、平成21年(2009年)3月に「上田市人権同和教育の基本方針」を策定し、これに基づき学校、家庭、地域、企業・職場などにおける人権同和教育と啓発を進めてきました。
 このように偏見や差別意識の解消に向けた取組は、行政だけでなく市民や地域などの努力によって進められてきました。しかし、平成24年(2012年)5月に行った「人権に関する市民意識調査」によると、自分の人権が侵害されたと思ったことがあると答えた人は前回調査より増えており、また女性、高齢者、障害者、同和問題などにおいて差別や偏見があると答えた人は前回調査より増える結果となりました。
 このことから、市民一人ひとりの人権意識向上のため、人権教育・啓発等の人権施策の更なる充実が求められています。
 更に、少子高齢化の一層の進行や社会経済情勢の急速な変化、情報技術の進展等により、新たに取り組むべき人権課題が顕在化し、国や県においても人権施策に関して新たな動きがあるなど人権をめぐる状況も変化しており、人権についての取組は一層その重要性が増しています。
 そこで、一人ひとりの人権が尊重される社会の実現を目指して、「上田市人権尊重のまちづくり審議会」の答申に基づき、上田市人権施策基本方針および上田市人権同和教育の基本方針を一本化して人権施策の全般にわたる基本的な考え方や方向性を示す「上田市人権施策基本方針(第一次改訂)」を策定しました。

2 基本方針の位置づけ

 この基本方針は、「人権教育および人権啓発の推進に関する法律」(平成12年)、ならびに「上田市人権尊重のまちづくり条例」(平成19年)に基づいています。
 また、第一次上田市総合計画および上田市自治基本条例(平成23年)の趣旨との整合性を図っています。
(1)上田市における人権尊重のまちづくりに向けて、課題を明らかにしたうえで、上田市が取り組むべき人権施策の基本的な方針を示すものです。
(2)人権施策の基本的な方針を踏まえ、上田市が目指す主な方向や施策を明らかにすることにより、学校、家庭、地域、企業・職場などあらゆる場面における、行政、市民、関係機関、関係団体などの自主的かつ積極的な行動を促すためのものです。

3 人権をめぐる動向

(1)世界の動き

 20世紀において、世界を巻き込んだ二度の大戦により多くの人命が失われました。特に第二次世界大戦においては、人権の侵害や抑圧が横行しました。その反省から、昭和23年(1948年)12月10日、第3回国連総会において「世界人権宣言」が採択されました。
 世界人権宣言では、「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義および平和の基礎である(以下略)」とし、また、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心を授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。」と表明しています。
 この「世界人権宣言」の理念を実効あるものとするため、「国際人権規約」、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」、「児童の権利に関する条約」等の人権に関わるさまざまな条約が採択されました。また、人権に関するさまざまな宣言やテーマを定め国際社会が共通して国際年などの取組が行われました。
 平成6年(1994年)に国連は、各国において「人権という普遍的な文化」が構築されることを目指し、平成7年(1995年)から平成16年(2004年)までを「人権教育のための国連10年」とすることを決議しました。同時に、効果的に人権教育を行うため、平成16年(2004年)から「人権教育のための世界プログラム」を採択し、平成17年(2005年)から平成21年(2009年)を第1段階として初等中等教育を、平成22年(2010年)から平成26年(2014年)を第2段階として、高等教育等が取り組まれています。

(2)日本の動き

 昭和22年(1947年)、わが国においては「基本的人権の尊重」を基本理念に掲げた日本国憲法が施行されました。
 そして、日本固有の人権問題である同和問題について、昭和36年(1961年)に同和対策審議会が設置され、昭和40年(1965年)に「同和問題の解決こそ国の責務である」と答申が出され、これを受けて昭和44年(1969年)に「同和対策事業特別措置法」が制定され、各種の特別対策を講じてきた結果、実態的差別は大きく改善され平成14年(2002年)に終了しました。
 また、平成8年(1996年)に「人権擁護施策推進法」が制定され、人権教育および啓発の推進と人権侵害被害者の救済に関する施策の推進を国の責務と定められました。そして、同法に基づき「人権擁護推進審議会」が設置され、平成11年(1999年)には、「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育および啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項」が答申されました。
 また、平成12年(2000年)には、国や地方公共団体等の人権教育および人権啓発に関する責務などを定めた「人権教育および人権啓発の推進に関する法律」が制定され、平成14年(2002年)には、同法に基づき「人権教育・啓発に関する基本計画」が策定されました。この基本計画は、平成23年(2011年)4月に一部変更されました。

(3)長野県の動き

 長野県においては、平成11年(1999年)3月に「人権を尊重し差別のない明るい長野県づくり」を目標とした「人権教育のための国連10年長野県行動計画」を策定、平成15年(2003年)4月に、国の法律を受けて「長野県人権教育・啓発推進指針」が策定され、平成22年(2010年)2月に少子高齢化、国際化、情報化の進展など社会情勢の変化に適切に対応した人権政策をより総合的に推進するため、県人権政策審議会の答申に沿った「長野県人権政策推進基本方針」が策定されました。この基本方針は、長野県における人権政策の基本的な考え方や方向性を示すもので、県では、基本理念に掲げる「人権が尊重される長野県づくり」に向け、各種人権施策を推進しています。また、この基本方針を受けて、長野県教育委員会においては、平成23年(2011年)3月に人権教育指導の手引きの改訂版である「人権教育推進プラン」が策定されました。

(4)上田市の動き

 平成18年度(2006年度)に設置された上田市人権擁護審議会の審議を経て、平成19年(2007年)4月に「上田市人権尊重のまちづくり条例」を制定し、この条例に基づき、平成20年(2008年)10月に「上田市人権施策基本方針」を策定しました。その後、平成21年(2009年)3月に教育委員会において、学校、家庭、地域、企業・職場などにおける人権同和教育と啓発を進めるため、「上田市人権同和教育の基本方針」を策定しました。
 また、新しい上田市の行政と市民の目指す方向として、人権が尊重され、誰もが誇りを持ち能力を発揮できるまちづくりを築くため「優しい思いやりあふれる人権尊重都市宣言」を平成22年(2010年)2月25日に議決宣言しました。平成24年(2012年)に「人権に関する市民意識調査」を実施し、上田市人権施策基本方針および上田市人権同和教育の基本方針を一本化した「上田市人権施策基本方針(第一次改訂)」を平成25年(2013年)3月に策定しました。

第2章 基本理念

1 基本理念

 上田市人権尊重のまちづくり条例の前文においては、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。世界人権宣言がうたうこの理念は、人類普遍の原理であり、日本国憲法が保障する基本的人権と法の下の平等も、かかる原理に基づくものである」としています。
 そして、上田市が目指す「人権尊重のまちづくり」として、上田市民憲章には「共に尊重し合い 平和を愛し やさしさあふれるまち」と定め、また都市宣言では、人権が尊重され、誰もが誇りを持ち能力を発揮できるまちを築くため、「優しい思いやりあふれる 人権尊重都市」と宣言しています。
 この考え方をもとに、人権施策の基本理念を次のように定めました。
 「一人ひとりの人権が尊重される社会を実現する」
 この基本理念の実現に向けて、次の3つのまちづくりを目標とします。
 (1)一人ひとりがかけがえのない命を大切にし、差別と偏見のない安心して暮らすことのできるまち
 (2)それぞれの個性や能力等を尊重し合うとともに、これらを十分に発揮することのできるまち
 (3)社会生活における多様な文化や価値観を尊重し合い、共によりよく生きていくことのできるまち

2 体系

画像:上田市人権施策基本方針 第一次改訂 基本体系

第3章 人権施策の方向性

 上田市における人権施策は、女性、子ども、高齢者などの各分野におけるそれぞれの計画に基づいて、相談、支援、救済などの事業を実施してきました。また、教育と啓発については、同和問題を人権教育の中心に位置づけ、さまざまな人権課題に対応した取組を推進し、人権尊重の意識や態度を育む事業を継続的に実施してきました。
 しかし、平成24年(2012年)に行った「人権に関する市民意識調査」によると、女性、高齢者、障害者において差別や偏見があると答えた人は前回調査より増え、同和問題においては差別意識がまだ残っていると答えた人は増加傾向となるなどの現実が明らかになっています。
 人権が尊重され、差別や偏見のない社会を実現するためには、市民一人ひとりが、人権尊重のまちづくりの担い手であることを認識し、傍観者ではなく推進者とならなければなりません。
 また、人権施策の推進について、上田市人権尊重のまちづくり条例では「あらゆる人権問題の解決に向けて、市民の人権意識の高揚を図るための教育および啓発に関する事業をはじめ、市政のすべての分野において総合的かつ計画的な施策を推進するものとする。」(第4条)と述べています。
 これらを踏まえ、施策として「人権の視点に立った行政の推進」、「人権意識高揚のための施策」、「人権擁護と救済のための施策」を基本施策に据えて推進します。

1 人権の視点に立った行政の推進

 市行政すべての分野において人権の視点に立ち総合的に施策を推進することで、人権が尊重される社会の実現を目指します。
 また、職員一人ひとりが、人権行政の担い手であることを自覚するとともに、研修等により資質の向上と人権意識の高揚を図ります。

2 人権意識高揚のための施策

 市民の人権意識を高めるため、人権教育と人権啓発を推進します。

(1)人権教育・啓発の推進

 人権教育とは、「人権教育および人権啓発の推進に関する法律」【資料4】によると、「人権尊重の精神の(注1)涵養(かんよう)を目的とする教育活動」であり、人権啓発とは、「国民の間に人権尊重の理念を普及させ、およびそれに対する国民の理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動(人権教育を除く)」と定義されています。
 人権教育と人権啓発により、市民の人権尊重の精神が態度や行動などにおいて、日常的に発揮できるようにすることを目指します。

(注1)涵養(かんよう) 自然に水がしみこむように徐々に養い育てること。

(2)人権教育・啓発の方向性

 国は、平成14年(2002年)3月に策定した「人権教育・啓発に関する基本計画」の中で人権教育・啓発の重要性を強調するとともに、人権教育の充実に向けた指導方法の研究を行うことを明示しました。そして、この研究を行うため有識者による「人権教育の指導方法などに関する調査研究会議」【用語1】を設置し、「人権教育の指導方法の在り方」として3回にわたり提言を行いました。
 この研究会議が提言した人権教育の基本的な在り方としては、人権や人権擁護に関する基本的で正確な知識を身につけること、そして、日常生活の中で人権上問題のあるような出来事に接した際に、直感的にその出来事はおかしいと思う感性や、日常生活において人権への配慮がその態度や行動に現れるような人権感覚を身につけることであるとしています。更に、人権教育を通じて育てたい資質や能力としては、この人権に関する知的理解と人権感覚により、自分の人権を守り他の人の人権を守ろうとする意識、意欲、態度であると述べています。
 長野県教育委員会は、この考え方を踏まえて「人権教育推進プラン」を策定し、「人権に関する理解と認識の深化」、「互いに人権を尊重し合う『共に生きる心』の醸成」、「人権尊重社会を築く意欲と実践力の高揚」を基本方針に据えています。
 上田市では、これらの方針に沿うとともに、本方針の基本理念を踏まえ、学校、家庭、地域、企業・職場などさまざまな場を通じて人権教育および啓発を推進します。

(3)さまざまな場における人権教育・啓発の推進

ア 学校

 学校、幼稚園・保育園などにおいては、人権教育をすべての教育活動の根底に据え、教育活動全体を通して人権に関する正しい理解と認識を深めるとともに、命の大切さや他人の痛みが理解できる心、お互いの違いを認め合う心など豊かな人間性を培い人権感覚を高めることで、いじめなどあらゆる人権侵害を許さない態度や実践力の育成を図ります。
 幼児期は、命の大切さや豊かな心情を育む教育を行い、学齢期においては、発達段階に応じて身近な事象と結び付け考えられる課題を設定し、意欲的かつ主体的に解決する学習や、人権を尊重し合う人間関係を築くため、コミュニケーション能力の向上につながる教育を行うとともに、問題に気づき問題を解決していく生きる力の育成を図ります。
 これらの教育活動を行う教職員の人権感覚を磨き、指導者としての力量を高めるため、各小中学校単位で行う「学校人権同和教育研究事業」や中学校区単位で行う「中学校ブロック教職員人権同和教育研修会」の充実を図ります。また、発達段階に適した学習活動を計画的に進めるため、幼稚園・保育園から大学までの担当者で構成する「学校等人権同和教育主任会」により相互の連携と取組の充実を図ります。

イ 家庭

 家庭は、基本的な社会性を身につけるなど、子どもの人格形成や人権意識の形成に大きな影響を与えます。家庭ではまず家族がお互いの人権を尊重し合える関係を構築し、日ごろから意識して人権問題を話題として取り上げ話し合うことで、人権に関する正しい理解と認識を共有していくことが必要です。
 そのために、家庭と学校、幼稚園・保育園が常に協力し合う体制づくりと、地域およびPTAなどで行われる人権教育や青少年教育により、家庭における人権意識の醸成に努めます。

ウ 地域

 地域における人権教育は、住民が人権問題を正しく理解し、解決に向けた意欲と実践力を育成することにあります。地域において、人権尊重の意識の醸成と、さまざまな人権課題への理解と認識を深めるため、住民に対する学習機会の提供や推進体制の整備、分館役員等の指導者の育成を図ります。
 公民館が実施している自治会などへの人権同和教育事業においては、参加者の確保などが課題となっていますが、住民への周知方法の工夫や、住民が関心を寄せる話題をテーマとするなど、より多くの住民の参加を目指します。また、参加体験型や小グループによる話し合いなどを取り入れ、参加者が主体的に人権問題に取組むことで、人権意識を高め日常の行動につなげます。

エ 企業・職場

 企業は、社会の一員として地域への影響力があり、人権尊重や環境保全など社会的貢献が求められています。従業員一人ひとりの人権が尊重される職場は、活性化され働きやすい職場となり、業績の向上と企業の評価につながります。
 企業・職場には、セクシュアル・ハラスメント【用語2】、パワー・ハラスメント【用語3】、男女格差、障害者や外国人の雇用などさまざまな課題があり、人権尊重の視点に立った職場づくりや企業活動が望まれています。また、人権の尊重を組織の社会的責任の重要な項目として位置づけたISO26000【用語4】への取組も求められています。
 企業は、人権尊重のまちづくりの担い手であることから、職場における主体的な人権教育や研修が進むよう「上田市人権教育企業連絡会」と連携し、人権担当者に対する研修や新入社員等の研修が積極的に取り組まれるよう支援します。

オ 特定の職業に従事する者

 特定の職業に従事する者とは、行政職員、教職員、消防職員、医療・保健関係者、福祉関係者などで、いずれも人権に関わりの深い職業であることから、一人ひとりが人権について正しい理解と深い認識を持ち、職務遂行に当たっては人権への配慮と誠実かつ公平であることが求められます。そのため人権尊重の視点に立った職務が遂行されるよう、人権に関する研修の充実を図ります。
 特に、上田市の人権行政の担い手である市職員の研修の充実を図ります。

3 人権擁護と救済のための施策

(1)相談・支援体制の充実

 人権に関する問題は多様化しており、相談・支援体制の充実や相談窓口に関する情報提供が求められています。
 人権相談に関しては、上田市の関係部署において個別に相談員を配置して相談業務を行っています。相談された人権問題が早期に解決が図られるよう法務局と人権擁護委員、警察署、消費生活センター、労働基準監督署などの各機関、また、NPO【用語5】など民間団体とも連携し、相談や支援が行えるよう体制の充実を図ります。

(2)救済・保護体制の充実 

 人権が侵害された場合の被害者の救済と保護については、市民の人権意識の高まりとともに、その充実が求められています。
 被害者の救済と保護については、国の関係機関(法務局、裁判所、労働基準監督署など)、県の関係機関(人権センター、警察署など)および上田市の関係部署(福祉、保健、教育など)などさまざまな機関が行っています。人権に関する問題の解決に向け各機関と連携し、必要かつ的確な救済と保護ができるよう体制の充実を図ります。

(3)情報提供の充実

 人権に関する相談・支援窓口および救済・保護に関する情報をすべての人が得られるよう、情報提供の充実を図ります。

第4章 分野別施策の方向性

1 女性

(1)現状と課題

 人は誰でも、人として尊重され、人間らしく生きる権利を持っています。これは男性であろうと女性であろうとすべての人に与えられた権利です。しかし、長い間女性は男性より低い地位に置かれてきた歴史があります。日本での男女同権が進められたのは第二次世界大戦後で、以来半世紀以上がたち女性の地位はかなり向上しました。
 「世界経済フォーラム」【用語6】の2012年版「男女格差報告」で、日本は調査対象となった135カ国中101位であり、2年連続して順位が低下しています。これは、女性議員が少なく、企業幹部も男性に占められているためと指摘されています。
 また、さまざまな場面で女性であるがゆえに複合的に困難な状況に置かれている現実もあります。法制度上では女性の人権を守るさまざまな仕組みがありますが、現実には女性に対する就業環境の不公平さ、家事や育児、介護の負担、セクシュアル・ハラスメント、ドメスティック・バイオレンス(DV)【用語7】の被害などさまざまな問題があります。この背景には、私たちの社会や日常生活の中に「男は仕事、女は家庭」や「育児や介護は女の仕事」など固定的な性別役割分担意識【用語8】が、根強く残っているからといえます。
 更なる男女平等を進め、女性に対する差別や偏見をなくしていくためにも、さまざまな課題の解決に向け、男女が対等のパートナーとして互いに知恵を出し合うとともに責任を担い合える社会の早期実現が必要です。

(2)基本方針

 「上田市男女共同参画条例」および「上田市男女共同参画計画」などに基づき、女性への差別や偏見をなくし、互いの人権が尊重される男女平等社会を実現するために、男女が性別にかかわりなく、一人の人間として個性と能力が発揮でき、ともに責任を担い合う社会を目指していきます。

(3)施策の方向

ア 偏見や差別意識の解消など啓発の推進

 女性に対する偏見や差別意識の解消と固定的性別役割分担意識の解消に向け、さまざまな機会をとらえて啓発・教育活動を進めます。

イ 政策や方針決定の場への女性の参画促進
  • 行政、企業、地域などのさまざまな分野において女性が活躍できる場を広げ、政策や方針などの意思決定の場への女性の参画促進に取り組みます。
  • 政策や方針決定の場に参画するための女性の人材育成や支援を行います。
ウ 女性に対するあらゆる暴力の根絶

 関係機関・団体などと連携し、啓発活動の推進や相談体制の充実、被害者の安全確保や保護救済体制の整備などの取組を推進します。

2 子ども

(1)現状と課題

 子どもも大人と同様に基本的人権が保障されています。更に、大人以上に人権を侵害されやすい子どもは、社会的に保護され守られなければなりません。
 平成元年(1989年)国連は「児童の権利に関する条約」(子どもの権利条約)を採択し、日本も批准しています。平成12年(2000年)に「児童虐待の防止等に関する法律」(児童虐待防止法)が施行され、その後2回の改正が行われるなど法的整備も進んでいます。
 いじめや不登校、体罰、児童虐待【用語9】などは、依然として大きな社会問題となっており、子どもの人権や生命までが守られない状況にあります。
 いじめや不登校などで悩んでいる児童生徒の早期発見、早期対応に努め、児童生徒や保護者などが抱えるさまざまな悩みを解消するため、個々のケースに応じた対応が必要です。
 また、最近は人間性や社会性を育む集団的体験や行動の減少、家庭や地域の教育力【用語10】の低下、規範意識の希薄化などから家庭と地域の教育力を高めることが必要とされています。
 更に、女性の社会参加や経済的理由などから家事や育児と仕事の両立、また子育ての不安感の軽減のための子育て支援が求められています。

(2)基本方針

 「上田市次世代育成支援行動計画」、「上田市教育支援プラン」などに基づき、すべての子どもたちが自らをかけがえのない存在として実感できるとともに、相手を尊重し、互いに支え合えるまちづくりを進め、心豊かな子どもを育てていく社会を目指します。

(3)施策の方向

ア 子どもの人権に関する教育の推進

 子どもが自分の大切さとともに、他の人の大切さを認めることができる人権感覚を育成するための保育や教育を推進します。

イ 子どもを虐待から守る取組の推進
  • 関係機関・団体などとのネットワークを広げ、相談支援体制の充実を図ります。
  • 子どもが被害者となる事件や事故を防止するため、関係機関・団体などと協働し、地域で子どもの安全を守る取組を進めます。
ウ 相談・支援の充実
  • いじめや不登校などの問題に悩む児童生徒の早期発見と早期対応に努めます。
  • いじめや不登校などの悩みを抱える児童生徒や保護者に対して、関係機関・団体などが連携して、相談・支援を行います。
  • 相談窓口に関する情報について児童生徒や保護者に周知を図ります。
エ 青少年健全育成の取組の推進

 青少年の人権を守り、健全な育成を進めるため、地域や関係団体などと連携して環境浄化や非行防止活動などを行います。

オ 子育て支援の充実

 多様な保育サービスの提供をはじめ、子育てに必要な支援情報の提供を行い、安心して子育てができる環境づくりを進めます。

3 高齢者

(1)現状と課題

 上田市の高齢化率は、平成25年(2013年)1月1日現在、26.2%で、今後、更なる少子高齢化、人口減少が進み、高齢者のひとり暮らしや夫婦のみの世帯、認知症の高齢者の増加が予想されています。高齢者に対する虐待は、その背景に認知症の問題があることから、認知症に対する正しい知識の普及や地域全体で高齢者と家族を支える仕組みづくりが求められています。
 上田市では、平成18年(2006年)の「高齢者虐待防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)」の施行にともない、「高齢者虐待防止対応マニュアル」を策定し、高齢者虐待防止【用語11】に向けた施策を推進しています。また、平成24年(2012年)には、「第5期上田市高齢者福祉総合計画」を策定し、高齢社会をめぐる課題に対応した施策を推進しています。
 認知症などで判断能力が十分でない方の成年後見制度の利用支援などのために、平成24年(2012年)に設置された「上小圏域成年後見支援センター」【用語12】により、高齢者の権利擁護の促進と支援を進めています。
 高齢者が年齢に関係なく意欲と能力に応じて働くことができる安定的な雇用の場が求められています。
 また、高齢者が虐待、振り込め詐欺や悪徳商法の被害に巻き込まれるケースが後を絶ちません。このようなことから高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる社会づくりが求められています。

(2)基本方針

 「上田市高齢者福祉総合計画」などに基づき、高齢者が心身ともに健康で、生きがいを持ち、個人の尊厳が保たれ、それぞれが望む生活を可能な限り住み慣れた地域で継続できる社会を目指します。

(3)施策の方向

ア 高齢者の人権を尊重する意識啓発の推進

 高齢者への尊敬や感謝の心を育むなど人権意識の啓発を行います。

イ 高齢者が安心して生活できる環境づくりの推進
  • 住み慣れた地域で安心して、生活できるよう包括的ケア【用語13】が提供される環境づくりを推進します。
  • 振り込め詐欺や悪質商法などの被害から守るため、高齢者などへの啓発や情報提供を行います。
ウ 高齢者の社会参加や生きがいづくり活動の支援
  • 地域活動などを通じて社会参加ができるよう、高齢者への生きがいづくり活動を支援します。
  • 経験や知識、技術を活かし、高齢者の意欲と能力に応じて就業できるよう支援します。
エ 高齢者の権利擁護の充実

 認知症などにより判断能力が十分でない方の権利を守るため、関係機関と連携し成年後見制度の普及と活用を促進します。

オ 相談体制の充実

 高齢者やその家族が気軽に相談できる体制を充実します。

4 障害者

(1)現状と課題

 障害者を含むすべての人々にとって住み良い平等な社会づくりを進めていくためには、国や地方公共団体が障害者に対する各種施策を実施していくだけでなく、社会全体で障害者に対して十分な理解をし、配慮していくことが必要です。
 上田市では、平成23年(2011年)策定の「上田市障害者基本計画後期計画」と平成24年(2012年)策定の「第3期上田市障害福祉計画」に基づき、障害者福祉の向上とサービス体制の確保など障害者施策の総合的な推進を図っています。
 平成24年(2012年)10月に「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待防止法)」が施行され、上田市でも「障害者虐待防止センター(虐待通報窓口)」を各地域自治センターおよび障害者総合支援センターの5箇所に設置し、障害者の虐待防止に向けた施策を推進しています。
 また、障害者の権利を守るため、「上小圏域成年後見支援センター」が設置され、成年後見制度についての情報提供や申請方法などの相談・支援を進めています。

(2)基本方針

 「上田市障害者基本計画」などに基づき、障害のあるなしにかかわらず互いに支え合い、ともに地域でいきいきと生活していくことができる「共生社会」【用語14】の構築を基本理念とし、障害者が住み慣れた地域で、その人格と個性が尊重され安心して自立した生活ができるように障害福祉サービスの提供と合わせ、差別や偏見など「心のバリア」のない社会を目指します。

(3) 施策の方向

ア 障害者に対する理解の促進

 地域社会の中で、障害者の人権尊重と権利擁護が図られるよう、障害や障害者に対する理解と認識を深めるための啓発を行います。

イ 障害者の自立と社会参加の促進
  • 障害者の自立を図るために、障害福祉サービスや保健、医療、介護予防施策の充実、包括的教育の確保と充実、および雇用や就労支援などの促進に向けた取組を推進します。
  • 障害者との交流やコミュニケーション支援の充実、スポーツや芸術文化活動の振興を通じて、障害者の社会参加を推進します。
ウ 障害者が安心して生活ができる地域づくりの推進

 障害者が安心して暮らせる福祉のまちづくりを推進するため、公共的建築物などのユニバーサルデザイン【用語15】の考え方を踏まえた地域の環境づくりを推進します。

エ 障害者の権利擁護の充実

 障害者の権利を守るため、関係機関と連携し成年後見制度の普及や活用を促進します。

オ 相談体制の充実

 障害者やその家族が住み慣れた地域で安心した生活ができるように、相談や支援を行います。

5 同和問題

(1)現状と課題

 わが国の歴史的過程で形づくられた身分的差別によって、国民の一部の人々が長い間、経済的、社会的、文化的に低い状態に置かれることを強いられてきました。同和問題は、これらの人々が、今なお結婚を妨げられたり、就職で不公平に扱われたり、その他日常生活のうえでいろいろな差別を受けるという、わが国固有の人権問題です。
 昭和44年(1969年)に同和地区住民の社会的、経済的地位の向上を不当にはばむ諸要因を解消するという目標をもった「同和対策事業特別措置法」が制定され、各種の特別対策を講じてきた結果、上田市でも実態的な差別は大きく改善され、平成14年(2002年)には特別対策が終了し、以後は一般対策で対応することになりました。
 上田市での同和教育においては、幼稚園・保育園、小学校、中学校、高校、大学などや公民館における住民の学習、解放子ども会の活動、企業における同和教育の実践を進めてきました。また、人権啓発としては上田市人権啓発推進委員会による啓発活動を行っています。これらの取組により、心理的な差別についてもその解消が進んできました。
 平成24年(2012年)に行った「人権に関する市民意識調査」では、「同和問題について今も差別が残っている」と回答した人は、61.5%となっています。この問題の解決には、一人ひとりが同和問題について、一層理解を深め、自らの意識を見つめ直すとともに、自らを啓発していくことが必要です。

(2)基本方針

 「上田市人権施策基本方針」などに基づき、相談・支援体制の充実を図るとともに、同和問題に対する正しい理解と認識を深め差別意識の解消に向けた取組を推進し、差別のない明るい社会を目指します。

(3)施策の方向

ア 同和教育の推進
  • 学校教育では、児童生徒が同和問題をはじめ多様な人権問題の解決を自らの課題としてとらえ、主体的に取り組もうとする態度や行動力を養います。また、授業研究や教職員研修などを通じ、学校間の連携を図ります。
  • 地域や公民館、企業等においては、人権同和教育推進員、社会教育指導員、企業人権教育連絡会などを中心として同和教育を推進します。
イ 啓発活動の推進

 同和問題に対する正しい理解と知識を深めるため、上田市人権啓発推進委員会をはじめとする関係団体と連携を図りながら、講演会、研修会や広報誌、各種資料の提供を通して、啓発活動を推進します。

ウ 相談事業の推進

 同和問題に関するさまざまな相談に適切に対応するとともに、解放会館・解放センターや関係団体などによる相談活動を推進します。

エ 差別事象への適切な対応

 人権が侵害される差別事象が発生したときは、関係機関・団体などと連携して適切な対応を行います。

6 外国人

(1)現状と課題

 上田市の外国人住民数は、平成25年(2013年)1月1日現在3,677人(2.3%)となっています。なお、平成24年(2012年)7月に外国人登録法は廃止され、外国人の方についても、日本人と同様に住民基本台帳法の適用対象となりました。これにより、日本人と同様の基礎的行政サービスが受けられるようになりました。
 最近の傾向としては、外国人の定住化が進んでおり、日常生活をしていくうえで、教育、雇用や労働、健康保険や年金、医療や福祉などさまざまな面で課題が生じています。
 こうした状況を踏まえて、すべての人が国籍や民族、文化の違いを互いに認め合い、尊重し合って暮らすことのできる多文化共生社会【用語16】を実現できるよう、平成19年(2007年)に「上田市多文化共生のまちづくり推進指針」を定めました。この指針に沿って平成21年(2009年)12月に「上田市多文化共生推進協会(AMU)」【用語17】が設立され、同協会を核として、多文化共生のまちづくりに向けた取組を行っています。

(2)基本方針

 「上田市多文化共生のまちづくり推進指針」などに基づき、外国人への必要な支援を行うとともに、国籍の異なる市民同士の交流を促進し相互の理解を深めることで、市民一人ひとりが自分と異なる文化、宗教、生活習慣などの多様性に対し寛容な態度を持ち、これを尊重することができる社会を目指します。

(3)施策の方向

ア 多文化共生の地域づくり
  • 地域住民と外国人との交流を通して、多文化共生についての理解を深めます。
  • 外国人が地域へ溶け込めるような仕組みづくりを進めます。
イ 生活相談やコミュニケーションに関わる支援
  • 外国人に対する多言語による相談体制の充実を図ります。
  • 日本語を十分理解できない外国人向け、多言語での情報提供と日本語の習得支援を行います。
ウ 教育面での支援
  • 外国人児童生徒に学習の機会を保障し、環境に適応して学校生活を送ることができるよう支援の充実を図ります。
  • 学習言語としての日本語の習得を支援するなどして、外国人児童生徒が日本社会において自ら未来を切り拓いていけるよう育成に取り組みます。

7 犯罪被害者等

(1)現状と課題

 近年、犯罪被害者やその家族への人権問題に対する社会的関心が高まっています。日本での犯罪被害者等への支援制度としては、昭和55年(1980年)の「犯罪被害者等給付金支給法」の制定にはじまり、平成16年(2004年)に「犯罪被害者等基本法」が成立し、犯罪被害者等に関する施策の基本理念が定められました。更に平成17年(2005年)に「犯罪被害者等基本計画」が閣議決定され、犯罪被害者等の権利や利益を守るための取組が進められています。
 犯罪被害者等は、犯罪という理不尽な行為により、身体や心が傷つけられたり、家族の命を奪われたりするなどの直接的な被害を受けるだけでなく、被害後に生じる周囲の人々の心無いことばや、メディアの報道などによるストレス、医療費や転居などにともなう経済的な負担、捜査や裁判での精神的な負担、事件に起因する精神的ショックや身体の不調など、いわゆる「二次被害」に苦しめられることもあります。
 犯罪被害者等が地域社会の中で安心して暮らしていくためには、専門的な心のケアと適切な情報提供が必要であると同時に、市民一人ひとりが、犯罪被害者等のおかれている状況について正しく理解することが大切です。

(2)基本方針

 「犯罪被害者等基本法」や「犯罪被害者等基本計画」などに基づき、犯罪被害者等の人権に対する配慮や保護が図られる社会を目指します。

(3)施策の方向

ア 犯罪被害者等に関する啓発の推進

 犯罪被害者等の人権や支援策について、関係機関・団体と連携して啓発活動を行います。

イ 適時適切な犯罪被害者等への支援

 犯罪被害者等の状況に応じ、情報提供や精神的被害に対するカウンセリングなど、関係機関・団体と連携し、適時適切な支援を行います。

8 インターネットによる人権侵害

(1)現状と課題

 情報発信技術の発展によりインターネットが急速に普及し、多くの人が情報の収集や発信、コミュニケーションの利便性は大きく向上しました。
 一方、発信者の匿名性も一つの要因となって、誹謗中傷や差別的書き込みなど、深刻な人権に関わる問題が発生しています。
 このため、平成14年(2002年)に「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限および発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ【用語18】責任制限法)」が施行され、これに関連して「名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」が策定され、重大な人権侵害で被害者自身が被害の回復を図ることが困難な場合に、法務省人権擁護局や全国の法務局がプロバイダなどに削除を依頼することができるようになりました。
 高度情報化社会の中にあって利便性が向上する一方で、インターネットを利用するに当たっては、特性と影響を十分理解し、情報の収集や発信における利用者のモラルを高める必要があります。
 また、小・中学生などの青少年のインターネット利用が年々増加し、誹謗中傷の書き込みやメールなど青少年が加害者や被害者になり、トラブルに巻き込まれる事案も発生しています。そうした状況の中、平成21年(2009年)に「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」が施行され、インターネット関係事業者にフィルタリング【用語19】の提供を義務化するなどの対策がされています。
 しかし、悪質な人権侵害が後を絶たないことから、利用者と保護者の人権啓発や相談窓口など青少年のインターネット利用環境の向上が求められています。

(2)施策の基本方針

 「上田市情報化基本計画」などに基づき、インターネットを利用する一人ひとりが、情報化社会がもたらす影響について十分理解し、情報の収集や発信における利用者のモラルを身につけ、インターネットによる人権侵害のない社会を目指します。

(3)施策の方向

ア インターネット利用に関する教育や啓発の推進

 インターネットの特性と影響を十分理解し、情報の収集や発信における利用者のモラルを高める教育や啓発を行います。

イ 相談体制の構築

 インターネットによる人権侵害の相談に対応するため、関係機関と連携した相談体制を整えます。

9 さまざまな人権問題

(1)現状と課題

 今までに述べた人権問題のほかにも、次に掲げるようなさまざまな人権問題が存在します。

ア パワー・ハラスメント

 職場内の労働問題であるばかりでなく、本人やその家族の生存権をも脅かす人権問題です。

イ 北朝鮮当局による人権侵害

 拉致問題は、人間の尊厳、人権および基本的自由の侵害であり、国家間の重大な人権侵害です。拉致問題については、広範な世論の支持と理解が不可欠です。

ウ HIV感染者やハンセン病患者など

 HIV感染者・エイズ患者【用語20】やハンセン病【用語21】、難病の患者や感染者などが、差別や偏見を受けることがないようにしなければなりません。

エ 地域社会の慣行による人権

 地域社会にはさまざまな慣行や因習がありますが、中には合理性が無く差別的なものも見受けられます。

オ 刑を終えて出所した人

 刑を終えて出所した人が更正し、社会の一員として日常生活を営むためには、家族、職場、地域社会など周囲の人々の理解と協力が必要です。

カ 性的指向・性同一性障害

 人の性愛の対象は多様ですが、同性愛や両性愛の人々など性的指向【用語22】の人に対する偏見や差別は根強いものがあります。また、性同一性障害【用語23】の人に対する偏見や差別も見受けられます。

キ ホームレス

 さまざまな事情から公園などで生活を余儀なくされる人々がいます。そして、偏見や差別の対象となる場合があり、暴力事件なども発生しています。

ク アイヌの人々

 アイヌの人々の民族としての歴史、文化、伝統および現状に関する認識と理解を深め、アイヌの人々の人権を尊重していくことが重要です。

 ほかにも中国帰国者の人権や、人身取引【用語24】、東日本大震災に起因する人権問題などさまざまな人権問題が存在します。今後、これらに加え、新たに発生する人権問題にも意識や関心を高める必要があります。

(2)施策の基本方針と方向

 さまざまな人権問題については、新たに発生する課題も含めて、人権侵害の状況を把握するなど人権に関する課題をしっかりと見据え、必要な啓発や相談・支援に取り組んでいきます。

第5章 推進体制

 一人ひとりの人権が尊重される社会の実現に向けて、上田市の人権施策を効果的に進めるため、市民との協働、関係機関・団体などと連携した取組を進めます。

1 行政における推進体制

 人権施策を総合的に進めるため、「上田市人権施策推進庁内会議」により、関係部局との連携を密にして施策の推進を図ります。

2 上田市人権尊重のまちづくり審議会

 市民、関係団体の代表者および識見を有する者により構成される「上田市人権尊重のまちづくり審議会」は、人権施策基本方針に関する事項およびその他の事項について審議するとともに、人権施策の実施状況に対して意見を述べます。

3 市民、団体、関係機関との連携

 人権施策の推進に当っては、市民、自治会や人権啓発推進委員会、NPOなどの市民団体、企業、ならびに国や県などを含む人権に関わる機関などと連携して効果的に取り組みます。

4 評価と見直し

 この基本方針を実効性のあるものにするために、関係部局が実施した人権施策について、上田市人権尊重のまちづくり審議会の意見を基に評価を行うとともに、社会情勢の変化などに応じて方針の見直しを行います。
必要に応じて人権に関する実態調査等を行い、その結果を分析、研究し施策に反映させます。

資料

1 用語解説

用語1 人権教育の指導方法などに関する調査研究会議

 人権尊重社会の実現に向け、「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年3月閣議決定)に基づき、学校における人権教育を推進するため、学習指導要領等を踏まえた指導方法の望ましい在り方等について調査研究を行う。
 人権を取り巻く諸情勢を踏まえつつ、以下の事項について調査研究を行う。
 (1)学校における人権教育の指導方法の在り方について
 (2)学校における人権教育に関する学習教材の在り方について
 (3)その他学校における人権教育に関する事項について
(出典 文部科学省 平成21年度人権教育の指導方法等に関する調査研究実施要項)

用語2 セクシュアル・ハラスメント

 セクシュアル・ハラスメントとは、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること」または「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること」をいいます。男女雇用機会均等法により事業者にその対策が義務付けられています。
(出典 厚生労働省 こころの耳)

用語3 パワー・ハラスメント

 パワー・ハラスメントとは、職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の働く関係を悪化させ、あるいは雇用不安を与えることをいいます。うつ病などのメンタルヘルス不調の原因となることもあります。
 平成24年1月30日、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」によると、職場のパワー・ハラスメント(パワハラ)とは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為をいう。」と定義されています。上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれます。
 職場のパワー・ハラスメントの行為類型は以下のとおりです(ただし、職場のパワー・ハラスメントのすべてを網羅するものではありません)。
 (1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
 (2)精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
 (3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
 (4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
 (5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
 (6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
(出典 厚生労働省 こころの耳)

用語4 ISO26000

ISO26000(社会的責任に関する国際規格)
  • 昨今の企業不祥事や環境問題の深刻化、経済格差の拡大などを背景に、企業の社会的に責任のある行動を求める動きが活発化。
  • これを受け、国際標準化機構(ISO)は、社会的責任(SR)の実施に関する手引きを定めた国際規格(ISO26000)を策定し、2010年11月1日に発行。
  • 同規格は、企業に限らずあらゆる組織が対象。ただし、それぞれの組織の特徴に合わせて必要な部分を活用することを促すもので、認証を目的とした規格ではない。
  • 2012年3月、ISO26000のJIS(日本工業規格)化が制定。国際標準化機構(ISO)が社会的責任(SR)の実施に関する手引きを定めた国際規格(ISO26000)。2010年11月1日に発行。
ISO26000において提示されている社会的責任を果たすための7つの原則。

ア 説明責任:組織の活動によって外部に与える影響を説明する。
イ 透明性:組織の意思決定や活動の透明性を保つ。
ウ 倫理的な行動:公平性や誠実であることなど倫理観に基づいて行動する。
エ ステークホルダーの利害の尊重:様々なステークホルダーへ配慮して対応する。
オ 法の支配の尊重:各国の法令を尊重し順守する。
カ 国際行動規範の尊重:法律だけでなく、国際的に通用している規範を尊重する。
キ 人権の尊重:重要かつ普遍的である人権を尊重する。
(出典 経済産業省 最近のCSRを巡る動向について)

用語5 NPO

 NPO(NonProfitOrganization)」とは、様々な社会貢献活動を行い、団体の構成員に対し収益を分配することを目的としない団体の総称です。したがって、収益を目的とする事業を行うこと自体は認められますが、事業で得た収益は、様々な社会貢献活動に充てることになります。このうち「特定非営利活動法人」とは、特定非営利活動促進法に基づき法人格を取得した法人です。法人格の有無を問わず、様々な分野(福祉、教育・文化、まちづくり、環境、国際協力など)で、社会の多様化したニーズに応える重要な役割を果たすことが期待されています。
(出典 内閣府)

用語6 世界経済フォーラム

 ジュネーブに本部を置く世界経済フォーラムは、1971年、ドイツ人経済学者クラウス・シュワーブによって設立された。
 毎年1月下旬に開かれるダボス会議は、世界の経済、および社会問題について論議する国際会議としてよく知られている。会議の参加者は、各国の首相や大統領の他に企業や経済組織の代表者、非政府組織(NGO)の代表者、ジャーナリストである。
 世界経済フォーラムは、より良い世界情勢の実現を目的とし、近年は、結核の撲滅、貧困の撲滅、環境保護などのプロジェクトを行ってきた。さらに、毎年ダボスで開催される年次総会を主催し、世界の経済に関連する様々な研究を行っている。
 世界経済フォーラムは、高額な年会費を支払える限られた人のみが参加し、政治家に根回しを行う金持ちのための排他的な会議であるという批判が向けられ、毎年行われる年次総会の期間中は、抗議運動がエスカレートしないよう警備の力を強めている。
 2001年からは、同じ時期にブラジルで世界社会フォーラムが開催されている。
(出典 スイスの公式情報サイト-スイスの情報-)

用語7 ドメスティック・バイオレンス(DV)

 「ドメスティック・バイオレンス」とは英語の「domesticviolence」をカタカナで表記したものです。略して「DV」と呼ばれることもあります。
 「ドメスティック・バイオレンス」とは何を意味するかについて、明確な定義はありませんが、一般的には「配偶者や恋人など親密な関係にある、またはあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されることが多いようです。ただ、人によっては、親子間の暴力などまで含めた意味で使っている場合もあります。内閣府では、人によって異なった意味に受け取られるおそれがある「ドメスティック・バイオレンス(DV)」という言葉は正式には使わず、「配偶者からの暴力」という言葉を使っています。

問題の重要性

 配偶者暴力防止法においては、被害者を女性には限定していません。しかし、配偶者からの暴力の被害者は、多くの場合女性です。
 配偶者からの暴力などの女性に対する暴力は、女性の人権を著しく侵害する重大な問題です。相談件数や調査結果等から、少数の人だけが被害を受けているのではなく、多くの人が被害を受けていることがわかります。
(出典 内閣府男女共同参画局 配偶者からの暴力被害者支援情報)

用語8 固定的性別役割分担意識

 男女共同参画というと多くの方が、「それは女性のためのもの」と感じるかもしれませんが、男性にとっても重要な問題だと思います。例えば、こんな経験はないでしょうか。

  • 育児休職を取りたくても「奥さんがいるのに何で君が?」と取れなかった
  • 「男は弱音を吐くべきでない」との思いから、悩み事を相談できずにいた「男性だから」という意識が、あなた個人にとっても、社会全体にとっても重荷になっていることがあるのではないでしょうか。

 「男は仕事・女は家庭」等のように性別を理由として役割を固定的に分ける考え方のことを「固定的性別役割分担意識」と呼んでいます。女性が「固定的性別役割分担意識」によって社会進出を阻まれてきた、ということはよく言われていますが、男性も、「男は仕事」、「男は強くなければならない」など、性別による役割の固定化を受けてきたと言えます。
 「男女共同参画社会」のめざすもの ~男性にとっても暮らしやすい社会を私たちのめざす男女共同参画社会とは、男性だから、女性だから、ということではなく、ともにその人権を尊重しつつ責任を分かち合い、個性と能力を発揮することができる社会です。
 男性自身の、男性に関する「固定的性別役割分担意識」を解消できれば、男性がより暮らしやすくなる社会を築いていけるのではないでしょうか。
(出典 内閣府男女共同参画局 男性にとっての男女共同参画)

用語9 児童虐待

 児童虐待は以下のように4種類に分類されます。

ア 身体的虐待

 殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など

イ 性的虐待

 子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触るまたは触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など

ウ ネグレクト

 家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など

エ 心理的虐待

 言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)など
 児童相談所の児童虐待の相談対応件数(平成23年度)は、児童虐待防止法施行前(平成11年度)の5.1倍に増加(約6万件)。虐待死はほとんどの年で50人を超えている
(出典 厚生労働省 児童虐待防止対策)

用語10 家庭や地域の教育力

 家庭教育はすべての教育の出発点であり、親子の愛情を根底に家族のふれあいの中から生きていくための基本的な力をつけるものです。しかし、都市化や核家族化、少子化の進行により、家族や地域の連帯感が薄れ、昔のように地域全体で子どもたちを育成するという意味では、地域の教育力の低下が懸念されています。心と体のバランスをとれた子どもたちの健やかな成長を願うには、学校、家庭、地域が互いに役割を明確にし、それぞれが責任をもって子どもたちの成長を支えていく仕組みづくりが必要です。
(出典 学校教育課)

用語11 高齢者虐待

 高齢者虐待防止法では、養護者または養介護施設の従事者などによる高齢者(65歳以上)に対する虐待と定められています。「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」
 養護者(高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等)が虐待であることを自覚しないまま行っている行為にも、虐待と思われるものが少なくないと想定される。

高齢者虐待の種類
身体的虐待
  • 殴る、蹴る、部屋に閉じ込める
  • 無理矢理食事を口に入れる
  • ベッドに縛りつけて身体を拘束するなど
養護の放棄
  • 長期にわたり入浴させない
  • 十分な水や食事を与えない
  • 部屋を清掃しないなど
心理的虐待
  • 怒鳴る、ののしる
  • 子どものように扱う
  • 意図的に無視するなど
性的虐待経済的虐待

本人の同意がないのにキス、性器への接触、性交渉を強要するなど

経済的虐待
  • 年金や現金の無断使用
  • 資産(家や土地など)の無断売却など

(出典 法務省人権擁護局 虐待防止シリーズ 高齢者虐待)

用語12 上小圏域成年後見支援センター

 上小圏域(上田市・東御市・長和町・青木村)にお住まいの方で認知症や知的障害・精神障害などにより、判断能力が十分でない方が、安心して暮らせるよう「成年後見制度」についての情報提供や申請方法などの相談・支援を行っています。

「成年後見制度」

 認知症や知的障害、精神障害などの理由で判断能力が十分でない方は、不動産や預貯金などの財産管理や様々な契約を結んだり、遺産分割の協議など自分でするのが難しい場合があります。また、自分に不利益な契約であっても判断できずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあう恐れもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援するのが成年後見制度です。
(出典 福祉課・高齢者介護課)

用語13 包括的ケア

 高齢者の尊厳、個別性の尊重を基本に、できる限り住み慣れた地域で在宅を基本とした生活の継続を支援するために、医療や介護のみならず福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが、切れ目なく提供され、個人の自立と生活の質が保たれること。
(出典 高齢者介護課)

用語14 共生社会

障害のある人もない人も、人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」

 皆さんは「共生社会」という言葉を聞いたことがありますか。それは、障害のある人も、ない人も、だれもが相互に人格と個性を尊重し支え合う社会のことです。
 障害がある人もない人も、共に暮らす私たちの社会ですが、障害のある人にとっては、障害のない人と同じように生活したいと思っても、日常生活、社会生活の中にさまざまなバリアが存在している場合があります。
例えば、障害のある人に対して、子ども扱いすることや、障害を理由として保育所利用を拒否すること、昇進をさせないこと、本人の意見を聞くことなく就学先を決めること、バス、タクシーなどの乗車を拒否すること、アパートの賃貸契約を断ること、結婚を認めないことなど。障害のある人は、こうしたさまざまな生活分野で多くのことに差別を感じ、そこにバリアがあると感じています。
 共生社会を実現していくためには、障害のある人にとってどんなことがバリアになっているのかを、障害のない人も一緒に考え、バリアを取り除いていくことが必要です。
(出典 政府広報オンライン お役立ち情報 障害のある人とない人が相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」を目指して)

用語15 ユニバーサルデザイン

 「ユニバーサルデザイン」とは、調整または特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲ですべての人が使用することのできる製品、環境、計画およびサービスの設計をいう。ユニバーサルデザインは、特定の障害者の集団のための支援装置が必要な場合には、これを排除するものではない。
(出典 厚生労働省社会・援護局 生活支援技術革新ビジョン勉強会報告 障害者権利条約における支援機器関連条項)

用語16 多文化共生社会

 「多文化共生」とは、国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的違いを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくことです。
(出典「多文化共生の推進に関する研究会報告書」2006年3月 総務省)

用語17 上田市多文化共生推進協会

 「上田市多文化共生推進協会」(英文名:AssociationforMulticulturalcommunitybuildingofUeda 略称:AMU)は、上田市内に暮らす国籍・民族や文化・言語などの異なるすべての人々が、同じ地域の住民として互いに認め合い、尊重しあって豊かに暮らすことのできる社会(多文化共生社会)を形成するために設立された中間支援組織です。
 上田市にはおよそ50か国から約3,700人の外国籍の人々が様々な言語で生活しています。
 市民、企業や団体、行政のネットワークを支援し、情報を共有しながら、幅広い分野における国際的な協力、支援、交流活動や人材の育成を推進し、多文化共生のまちづくりに努めています。
 現在、約80の行政、企業、地域ボランティア等の団体、個人の方が加入しています。
(出典 市民課)

用語18 プロバイダ

 何らかのサービスを提供する事業者のこと。通常は、インターネットに接続するサービスを提供するインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)を指す。プロバイダーは、自社、もしくはほかの通信事業者から借り受けた回線を相互に接続することで、インターネットを構成している。一般のユーザーは、プロバイダーと契約することでインターネットへ接続するための手続きを代行してもらう。プロバイダーの提供する主なサービスとして、インターネットの接続のほか、電子メールのアカウント、Webページを公開するためのスペース、IP電話などがある。
(出典 情報推進課)

用語19 フィルタリング

 一定の条件に基づいてデータなどを選別・排除する仕組みのこと。本来の意味は濾過(ろか)することである。
IP(インターネットプロトコル)で通信を制御する機能の一つに、パケット(情報を一定の長さにくぎって伝送する場合の一くぎりのこと)をチェックして通過させるかどうか判断するフィルタリングであるパケットフィルタリングがある。ルーターやファイアー・ウォールのセキュリティ制御として使われている。
(出典 情報推進課)

用語20 HIV感染者・エイズ患者

 HIV/エイズは、1981年(昭和56年)に世界で初めて症例が発見されて以来、世界中に広がり、2009年(平成21年)時点では、HIV感染者の数は3,330万人と推定されています(参考:UNAIDS『2010年版報告書』)。日本でもHIV感染者・エイズ患者数は増加しており、2010年の新規感染者・患者の報告数は1,544人に上っています(参考:厚生労働省「平成22(2010)年エイズ発生動向」)。
 HIVとはエイズを引き起こすウイルスのことです。このHIVによって身体の免疫力が破壊され、本来なら自分の力で抑えることのできる病気(日和見感染症)を発症するのがエイズです。
 当初は、治療法がなく、報道では、この病気の恐ろしさのみが強調されて伝えられました。こうして、人々の間に生じた誤解や偏見から、HIV感染を理由に職場への採用が取り消されたり、医療機関で差別的な対応や診療拒否をされたりするといった人権侵害が起こっています。
 HIVの感染経路は、性的接触、血液感染、母子感染の3つに限られます。握手をしたり、日用品を共用したり、プールやお風呂に一緒に入ったりするといった、日常生活の接触では感染しません。せきやくしゃみなどでもうつりません。つまり、日常生活の中では、性的接触以外で感染することはないのです。
 ただし、HIVはたとえ感染していたとしても、自覚症状がほとんどないため、本人も感染に気づかないまま、性的接触などにより、ほかの人に感染を広げてしまうケースもあります。そういう意味では、HIVの感染は、他人事ではなく、だれにとってもごく身近に起こりうることですが、コンドームを正しく使うことによって予防は可能です。また、HIV感染=エイズではなく、エイズを発症するまでには長い潜伏期間があります。現在では治療薬が次々と開発され、HIVの感染を早期に発見し、早期治療を行うことで、エイズの発症を抑えることができるようになっています。HIVに感染しても、適切な治療を受けることで、社会生活を続けていくことができるのです。
 アメリカでは、エイズが社会的な問題となってきた1990年(平成2年)頃から、エイズで亡くなった人への追悼の気持ちとエイズに苦しむ人々への理解と支援の意思を示すため、「レッドリボン」運動が始まりました。その運動は、いま、国境を越えた世界的な運動として発展しています。レッドリボンは、エイズに対して偏見をもっていない、エイズとともに生きる人々を差別しないというメッセージです。私たちの周りにも、レッドリボンの輪を広げていきませんか。

よくある誤解・思い込み
  • 握手や会話で感染する
  • お風呂やプールに一緒に入ると感染する
  • せきやくしゃみで感染する
  • 便座や食器、タオルなど日用品の共用で感染する
  • 血を吸った蚊やダニなどに刺されることで感染する
正しい知識
  • HIVの感染経路は性的接触、血液感染、母子感染の3つに限られ、日常生活の接触では感染しません
  • 療薬の開発により、HIVに感染しても、早期発見と早期治療によって、エイズの発症を抑えることができるようになっています
  • 近年は、性的接触での感染が増えています。特定のパートナーであっても、感染のリスクがないとは限りません。HIVはだれにとっても身近な問題です

(出典 政府広報オンライン お役立ち情報HIV・ハンセン病に対する偏見・差別をなくそう)

用語21 ハンセン病

 ハンセン病は古くから知られている病気で、1873年(明治6年)に、ノルウェーのハンセン医師によって、病の原因である「らい菌」(感染菌)が発見されたため、ハンセン病と呼ばれています。日本においては、1907年(明治40年)、患者を収容する目的で「癩(らい)予防ニ関スル件」という法律が制定され、その後、1931年(昭和6年)「癩予防法」の制定によって、ハンセン病患者を強制的に療養所に収容し、一般社会から隔離するという「隔離政策」が行われるようになりました。この政策は患者の救済についても目的としていましたが、人々の間には、ハンセン病は伝染しやすい、というイメージが広まり、偏見を強めることとなったと言われています。

よくある誤解・思い込み
  • 感染力が強い
  • 遺伝病である
  • 不治の病である
正しい知識
  • 日常生活で感染する可能性はほとんどありません
  • 感染力が弱く、うつりにくい
  • 感染しても発病することはまれです
  • 遺伝病ではありません
  • 早期に発見し、適切な治療をすれば、完治します

 その後、ハンセン病の研究が進み、らい菌は、感染力が非常に弱く、たとえ感染しても発病することはまれであることが明らかになりました。また、1940年(昭和15年)代以降は、治療法が確立され、早期に発見し、適切な治療を行えば、治すことができる病気となりました。
 ところが、ハンセン病が感染症であり適切な治療を行えば治ることが分かっても、なお隔離政策が続いたことなどから、それまでの誤解が払拭されず、「感染」というイメージから、ハンセン病患者やその家族は偏見・差別を受けてきました。
 ハンセン病と診断された方々は、生涯、療養所から出ることはできず、親や兄弟姉妹と一緒に暮らすことや、結婚しても子どもを生むことは許されませんでした。また、実名を名乗ることができず、亡くなっても故郷の墓に埋葬してもらえないなど、さまざまな苦痛を強いられてきました。この隔離政策は1996年(平成8年)まで継続されていました。
 今なお残るハンセン病への偏見・差別をなくしていくために1996年(平成8年)に「らい予防法の廃止に関する法律」が施行され、明治時代から1世紀近く続いた隔離政策はようやく終わりを告げました。しかし、ハンセン病療養所に入所していた方の中には、完治したにもかかわらず、今でも療養所にとどまる人が少なくありません。高齢で身寄りがないことや、長期間にわたり社会との交流を絶たれてきたこと、ハンセン病に対する偏見や差別が今なお根強く残っていることから、社会復帰が難しい状況になっているのです。
 政府としても、ハンセン病の患者・元患者の方々の社会復帰を支援していますが、ハンセン病の患者・元患者の方々が住みよい社会にしていくためには、ハンセン病に対する偏見・差別をなくしていくことが必要です。そのためには、私たち一人一人が、ハンセン病について正しい知識を持つとともに、ハンセン病の患者・元患者の方々、その家族が受けてきた過去のつらい歴史を考えながら、相手の人権を尊重する気持ちを持つことが大切です。
 最近では、学校の子どもたちが療養所の見学に訪れ、入所者の話を聞いたり、療養所で地域の人たちとの交流会が行われたりするなど、ハンセン病に対する知識と理解を深めるための活動も広がってきています。
(出典 政府広報オンライン お役立ち情報HIV・ハンセン病に対する偏見・差別をなくそう)

用語22 性的指向

 「男性が男性を、女性が女性を好きになる」ことに対しては,根強い偏見や差別があり、苦しんでいる人々がいます。性的指向を理由とする偏見や差別をなくし、理解を深めることが必要です。
 性的指向とは、人の恋愛・性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念を言います。具体的には、恋愛・性愛の対象が異性に向かう異性愛(ヘテロセクシュアル)、同性に向かう同性愛(ホモセクシュアル)、男女両方に向かう両性愛(バイセクシュアル)を指します。
 同性愛者,両性愛者の人々は、少数派であるがために正常と思われず、場合によっては職場を追われることさえあります。このような性的指向を理由とする差別的取扱いについては、現在では、不当なことであるという認識が広がっていますが、いまだ偏見や差別が起きているのが現状です。
(出典 法務省 啓発冊子 人権の擁護)

用語23 性同一性障害

 女性なのに、自分は「本当は男なんだ、男として生きるのがふさわしい」と考えたり、男性なのに「本当は女として生きるべきだ」と確信する現象を「性同一性障害(genderidentitydisorder,GID)」と呼びます。このような性別の不一致感から悩んだり、落ち込んだり、気持ちが不安定になることもあります。
 性同一性障害については、まだ理解が進んでいるとはいえず、診断や治療ができる病院も多くはありません。そこで、性同一性障害とはどのような病気であるのか、その症状や治療法、法的側面等について解説します。
 性別といえば、男性か女性の2種類に分かれると多くの人たちは単純に考えます。しかし、性別には生物学的な性別(sex)と、自分の性別をどのように意識するのかという2つの側面があります。性別の自己意識あるいは自己認知をジェンダー・アイデンティティ(genderidentity)といいます。
 多くの場合は生物学的性別と自らの性別に対する認知であるジェンダー・アイデンティティは一致しているため、性別にこのような2つの側面があることには気づきません。しかし、一部の人ではこの両者が一致しない場合があるのです。そのような場合を「性同一性障害」といいます。
 つまり、性同一性障害とは、「生物学的性別(sex)と性別に対する自己意識あるいは自己認知(genderidentity)が一致しない状態である」と、定義することができます。
(出典 厚生労働省 こころの病気を知る)

用語24 人身取引

 近年,グローバル化の一層の発展や、経済格差の拡大等に伴って、人身取引は国境を越える深刻な脅威となっています。我が国は,人身取引は重大な人権侵害であるとの認識の下、平成16年(2004年)に人身取引対策に関する関係省庁連絡会議を設置し、人身取引対策行動計画を策定、この計画に基づく各種対策によって大きな成果を上げました。一方で、人身取引の手口の巧妙化・潜在化など、人身取引をめぐる情勢の変化を踏まえ、平成21年(2009年)12月にはこれを改訂し、「人身取引対策行動計画2009」を策定しました。
 平成23年中に日本政府が保護した人身取引の被害者数は45名でした。同行動計画に基づき,被害者の帰国支援,ODAを活用した国際支援,国際捜査共助の充実化などの人身取引撲滅のための国際的な取組へ積極的に参画しています。
(出典 外務省 国際組織犯罪対策・人身取引)

2 人権に関する市民意識調査報告書

3 世界人権宣言(外部サイトへリンク)<外部リンク>

4 日本国憲法(外部サイトへリンク)<外部リンク>

5 人権教育および人権啓発の推進に関する法律(外部サイトへリンク)<外部リンク>

6 上田市人権尊重のまちづくり条例

7 上田市人権施策基本方針策定の経過

平成20年
10月7日 上田市人権施策基本方針の策定
平成24年
2月10日 人権尊重のまちづくり審議会開催(基本方針改定の諮問・協議)
5月7日 「人権に関する市民意識調査」実施
7月27日 人権尊重のまちづくり審議会開催(基本方針の協議)
8月10日 「人権に関する市民意識調査」報告書
10月10日 人権尊重のまちづくり審議会開催(基本方針の協議)
10月16日 人権男女共同参画庁内推進会議開催(基本方針の協議)
12月13日 人権尊重のまちづくり審議会開催(基本方針の協議)
平成25年
2月6日 人権尊重のまちづくり審議会開催(答申案の協議)
2月15日 上田市人権施策基本方針(第一次改訂)について市長に答申
2月21日から3月6日 パブリックコメントの実施

8 上田市人権尊重のまちづくり審議会委員