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陣場台地”椀子(まりこ)ヴィンヤード”の歩み

更新日:2024年1月15日更新
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 丸子地区陣場台地にある「椀子(まりこ)ヴィンヤード」。世界で最も素晴らしいワイナリー及びヴィンヤードを決める番付「ワールド・ベスト・ヴィンヤード」において、近年世界38位及びアジアNo.1を獲得するなど、広大なぶどう畑は地域の宝となっています。そんな椀子ヴィンヤードですが、かつては不法投棄が横行する荒れ果てた土地でした。そんな荒廃地が世界に誇るぶどう畑に蘇るまでの道のりをご紹介します。

椀子ワイナリー

【写真】2023年現在の椀子ワイナリー/ヴィンヤード

陣場台地の遊休荒廃地化

 丸子地区塩川及び長瀬にある陣場台地は、浅間山や蓼科山、また遥かに北アルプスなど360度見渡せる眺望に富み、自然環境にも恵まれた台地です。この地域は年間降水量が平均900ミリと少なく、干害を受けやすい地形でしたが、かつては養蚕のための桑畑が広がっており、昭和40年代からは桑畑に変わり薬用人参の栽培が行われてきました。しかし、連作障害や価格の低迷、また農家の高齢化等により作付けが減り続け、平成に入ってからは陣場台地の農地約25ヘクタールのほとんどが遊休荒廃化していました。

遊休荒廃地化した陣場台地

【写真】遊休荒廃地化した陣場台地

ワイン用ぶどう栽培の導入

このような中、メルシャン株式会社が世界水準の高級ワイン造りを目指して、長野県内に自社農場としてワイン用ぶどう栽培地を探していたところ、「緩傾斜で風通しが良く寡雨多照」という環境が求める条件と合致しているとして、陣場台地が候補地となりました。

 これを受けて地域では遊休荒廃農地の解消を第一に、また将来的な地域振興を鑑み、平成12年に地元関係者(当時の地元区長や町議会議員、農業委員等)で、陣場台地土地利用研究委員会(現名称:陣場台地研究委員会)を組織して、ワイン用ぶどうの導入などについて協力体制を構築しました。地域の理解、地権者の同意を得ることで、メルシャン株式会社は『農地所有適格法人有限会社ラ・ヴィーニュ』を設立し、2003年農家から農地を借り受け、事業を開始しました。
 地域の遊休荒廃地の解消と地域振興に鑑み、地権者の同意も得て事業導入を決定し、平成14年から長野県の地域づくり総合支援事業により農地造成や、排水路や調整池の整備などを実施して、平成19年度末に21ヘクタールの造成が完了しました。
造成中の陣場台地造成中の陣場台地2
【写真】造成中の陣場台地

椀子(まりこ)ヴィンヤードの開園

 このワイン用ぶどう畑は『椀子(マリコ)ヴィンヤード』と命名され、安定的に年間80トン以上の収量を目指して栽培が始まりました。平成14年から16年まで県の地域づくり総合支援事業により、農地造成やぶどう垣根資材、ぶどう苗について補助を受けながら事業を進めるとともに、排水溝や調整池の整備も実施しながら10ヘクタールを植栽しました。

 その後、知見酢屋の賛同を得ながら、平成18年度から拡張分の造成計画を策定して事業を進め、平成19年度末には約21ヘクタールを造成しました、その後、平成30年に約2ヘクタール。令和5年までに約7ヘクタールを造成し、全体で約30ヘクタール(東京ドームおよそ6個分)のぶどう畑として蘇りました。

 「有限会社ラ・ヴィーニュ」では地元雇用を含め現在7名体制で高品質な8種類のワイン用ぶどうを丹精込めて栽培しています。

収穫期の椀子ヴィンヤード

年度 収穫量 年度 収穫量
平成16年度 0.1トン 平成26年 90トン
平成17年度 1トン 平成27年度 87トン
平成18年度 10トン 平成28年度 113トン
平成19年度 6トン 平成29年度 72トン
平成20年度 14トン 平成30年度 111トン
平成21年度 36トン 令和元年度 120トン
平成22年度 18トン 令和2年度 94トン
平成23年度 38トン 令和3年度 58トン
平成24年度 73トン 令和4年度 102トン
平成25年度 68トン 令和5年度 81トン

​ぶどう栽培による自然の回復

 ぶどうの栽培方法に「垣根仕立ての草生栽培」を採用することで、日本の国土から減少している里山の草原が保全され、希少性の高いチョウ類や植物などが増加し、豊かな生態系が形成されることが、これまでの研究を通じて確認できました。

 この豊かな自然環境を後世に伝え、今後も保全していくことは「2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全する」という国際目標である「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」と一致していることから、メルシャン株式会社を擁するキリングループでは椀子ヴィンヤードを対象として、この国際目標の達成に向け環境省が主催する「自然共生サイト」への登録を申請し、2023年10月6日付で正式認定となりました。

 「豊かな自然環境が保全されている」椀子ヴィンヤードを含む陣場台地一帯では、上田市にとっての「地域の宝」であり、環境保全に係る貴重な学習の場にもなっています。

地元小学校の環境教育の様子オオルリシジミの写真

【写真】絶滅危惧種オオルリシジミの飛来を願って食草クララを植栽する地元小学生(左)オオルリシジミ(右)

 

陣場台地研究委員会 活動紹介

 陣場台地研究委員会では、地域や農業活性化委員会と連携し、ぶどう畑内の余剰地を活用して、地元小学生の食育教育やそば栽培を行っています。

 また、地域への貢献・協調や地元住民との交流を深めていきたいというメルシャン株式会社の意向を受けて開催している、ワインセミナーやヴィンヤードスケッチ大会、植樹・除葉・収穫作業体験は人気イベントとして定着し、毎年多くの参加があり、ワインへの理解や地域の活性化が進んでいます。

収穫期のヴィンヤード

小学生のじゃがいも栽培ヴィンヤードスケッチ大会の様子

【写真】広大な畑で収穫作業中(上)地元小学生のじゃがいも栽培(左下)ヴィンヤードスケッチ大会(右下)

椀子ヴィンヤード20周年記念式典

 2023年で椀子ヴィンヤードは開園20周年を迎えました。20周年を記念して、上田市丸子文化会館セレスホールにて、椀子ヴィンヤード20周年記念フォーラムを開催しました。

 式典の内容や式典中に放映した「映像で振り返る陣場台地の20年」は以下をご覧ください。