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レイラインがつなぐ「太陽と大地の聖地」~龍と生きるまち 信州上田・塩田平~のタイトル画像 レイラインがつなぐ「太陽と大地の聖地」~龍と生きるまち 信州上田・塩田平~

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上田市の日本遺産認定ストーリー

更新日:2024年1月31日更新
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ストーリーの概要

生島足島神社独鈷山と夫神岳から扇状に開ける地・塩田平は、古来「聖地」として、多くの神社仏閣が建てられている。

 山のふもとにある信州最古の温泉といわれる別所温泉、「国土・大地」を御神体とする「生島足島神社」、「大日如来・太陽」を安置する「信濃国分寺」は、1本の直線状に配置され、レイラインをつないでいる。
 夏至と冬至に、鳥居の中を太陽の光が通り抜け、神々しくぬくもりのある輝きを享受できるのだ。
 先人たちが、この地が特別であると後世に伝えようと遺した様々な仕掛けは、今も、訪れる人びとにパワーをチャージさせる。

ストーリー詳細

■信州の学海

安楽寺木造三重塔上田は、険しい山々に囲まれた盆地ゆえに、本州では一番雨の少ない地だ。

 「おてんとうさま」が毎日のように微笑み、穏やかな気候という特徴は、信濃国分寺が置かれたこと、鎌倉北条氏の一派が終の棲家としてここを選んだ理由でもある。

 塩田平には数多くの寺社が建てられ、中国の高僧や多くの学僧が訪れたのは、山を背に構える別所温泉があったことが大きい。
 豊かな湯で心まで洗われる温泉の楽しみがあったからこそ、僧たちは、この地を訪れたのであろう。
 別所温泉にある安楽寺を訪れてみると、薄暗い木立の中、見上げるように階段を登った先に、日本唯一の木造八角三重塔が目に飛び込んでくる。
 微かな光の方向に仰ぎ見る屋根裏の華やかな木組みは、私たちを自ずと厳かな気持ちにさせてくれる。
 しかも「四重塔」にも見える不思議な形だ。

 また、北向観音堂は、善光寺と「両参り」すると御利益が増すという。境内の手水(ちょうず)までも温泉を使い、湯煙が立ち上る境内には温泉の匂いが漂う。
 見晴台に立つと、塩田平から市街地までを見渡せ、我はこの地に降り立ったのだ、という気持ちにさせられる。
 この地が僧たちにとって「特別な場所」であり、「別所」と名付けられたことも納得できる。
 湯煙が漂う地に花開いた仏教文化の遺産は、湯浴みの効能のみならず、訪れる人びとを癒している。

■神宿る「山」への祈り

岳の幟行事上田の雨が少ない気候は、風雨が引き起こす災いからこの地の暮らしを守ってきた。しかし、それゆえに神は時として干害などの試練を課してきた。

 人びとは水源となる山々に神を崇め、祈り、恵みの雨を願った。
 500年以上も続く雨乞いのまつりである「岳の幟(たけののぼり)」は、色鮮やかな幟が特徴的だ。
 「下り龍」を描いた幟で、夫神岳山頂に祀られた「龗”オカミ”」と呼ばれる九頭龍神を山麓の別所神社までお連れする。
 龍をかたどったたくさんの幟を迎えるのは、三頭獅子とささら踊りの子どもたち。カラフルな幟と衣装が鮮やかに映え、山間に歌声と太鼓の音が響くころには、本当に、龍からの雨に恵まれる。
 山には、古より受け継がれてきた水への憧れと神への畏怖が投影される。
 龍が宿るこの山は、山菜や松茸など、山の幸をはぐくみ、マツタケ小屋の隆盛につながっている。

■祈りの言葉は「アメ フラセタンマイナ」

舌喰池塩田平はため池を造って水を蓄え、ここで温めた水を田んぼに入れて稲の生長を促し、「塩田三万石」と呼ばれる上田随一の穀倉地帯へと変身した。

 ため池でも「百八手」と呼ぶ雨乞いのまつりが行われる。
 池の周りを大勢で囲んで「たいまつ」に火をつけ、もくもくと上がる煙のなか「アメ フラセタンマイナ」と唱える。
 ため池は稲穂をはぐくむだけでなく、マダラヤンマなどの命もつないできた。
 人柱やカッパなどの伝説は、ため池にも神を崇めていたことをうかがわせる。
 雨を願う人びとは、時に荒療治として路傍のお地蔵様を川へ放り込んだ。ここでも祈りの言葉は「アメ フラセタンマイナ」。
 お地蔵様を怒らせてでも、龍(雨)との再会を願っていた。
 独鈷山と夫神岳、そして麓の寺社は、常に塩田平の人びとの暮らしに寄り添ってきた。
 そして、路傍のお地蔵様は、また川に投げ込まれないかと心配して、今日も雨雲を待ちながら空を見上げている。
 これが「山に神、野に仏」とも言うべき、上田の人びとがつないできた「祈りのかたち」だ。

 

■未来への懸け橋

別所線 このように塩田平には、この地を特別な「聖地」とする景観が遺されている。国土・大地を祀る「生島足島神社」、「大日如来・太陽」が安置された「信濃国分寺」。
 生島足島神社は夏至には太陽が東の鳥居の真ん中から上がり、冬至には西の鳥居に沈む。太陽と大地は、この神秘的な光景をレイラインとして現代に遺した。
 そして、この「太陽と大地の聖地」に重なるように遺したもうひとつの景観が、100年前から守り続けてきた鉄道・別所線だ。
 生島足島神社から、別所温泉までの軌道は、不思議なことにレイラインと一致する。
 そして、駅をつなぐ線路は、空からみると龍のかたちをしていると言われる。
 塩田の人びとは龍を特別な神として崇め、祀り、龍とともに生きてきたことを、別所線の軌道に投影して大切に遺してきたのだ。
 龍の背に乗ってめぐる「太陽と大地の聖地」は、これからも、まぶしいばかりの輝きとぬくもりをもって、訪れる人の心に光を与えてくれるだろう。

 ※生島足島神社以外の当ページ内の写真は、写真家 岡田光司さんの作品です。