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上田市日本遺産をテーマにした短編小説
上田市の日本遺産を多くの方に親しみを持って知っていただけるよう、日本遺産認定ストーリーをテーマとした短編小説を制作しました。
作品一覧
作品名 | 執筆者 | 作品PDFファイル |
---|---|---|
忍びと瑠璃 | ペリー荻野 | 忍びと瑠璃 [PDFファイル/1015KB] |
五尺七寸の光 | ペリー荻野 | 五尺七寸の光 [PDFファイル/718KB] |
カッパのレイライン初巡礼 | 山木敦 | カッパのレイライン初巡礼 [PDFファイル/960KB] |
シン説・舌喰池異聞 | 山木敦 | シン説・舌喰池異聞 [PDFファイル/619KB] |
神と仏のよもやま話 | 岡沼美樹恵 | 神と仏のよもやま話 [PDFファイル/358KB] |
グランパのバケットリスト | 岡沼美樹恵 | グランパのバケットリスト [PDFファイル/534KB] |
円盤が来た日 | 秦野邦彦 | 円盤が来た日 [PDFファイル/589KB] |
松茸が教えてくれたこと | 秦野邦彦 | 松茸が教えてくれたこと [PDFファイル/369KB] |
春休みは忙しい | 橋本達典 | 春休みは忙しい [PDFファイル/324KB] |
想い出がいっぱい | 橋本達典 | 想い出がいっぱい [PDFファイル/495KB] |
作品紹介
忍びと瑠璃(執筆者:ペリー荻野)
瑠璃色に輝くは、忍びの心か――。
『忍びと瑠璃』は、過酷な運命を背負う忍びたちの物語です。創作された信州上田の地を舞台に繰り広げられるこの物語は、過去に栄えし真田一族と、その運命を左右する忍びたちの姿を描き出します。
主人公・鬼丸は、徳川に仕える若き忍び。彼が巻き込まれる一連の偵察任務は、やがて未来の日本を揺るがす大戦へとつながります。戦の影で蠢く忍びたちの息遣いが、読者を歴史の深淵へ誘います。
神秘的な力と言葉が織りなす、情熱的で迫力満点の展開。過ぎ去った時を忍者の目を通じて体験できる貴重な機会です。そして何より、満ち足りぬ心を静かに揺さぶる瑠璃色の記憶…。絶妙な文体と心理描写で、運命に翻弄される人々の内なる闘いが緻密に繰り広げられていきます。
『忍びと瑠璃』はただの忍者ものでは終わりません。忍びたちの確執、信念、そして時に寄せる慈しみが、読者の心に深い印象を残すでしょう。来たるべき戦、そして忍びに課せられた任務を通じて、人の心の琴線に触れる物語をぜひその手に。
五尺七寸の光(執筆者:ペリー荻野)
江戸時代の信州上田を生き抜いた一人の女性の物語『五尺七寸の光』。
身長だけが目立ち続けてしまった”おさん”の成長と、運命の糸に導かれた恋。毎日が閉塞感でいっぱいだった彼女の心を解き放ったのは、五尺七寸のたくましいその背丈と、太陽のように明るい祖母の愛でした。
紺屋町で呉服商を営む「丸屋」の娘として、変わり者の太郎兵衛との結婚が決まり、家と自立の間で揺れ動くおさん。彼女と太郎兵衛、そして周囲の喜びや葛藤を繊細に描く本作は、自分自身を愛せなかった少女が、成長を経て五尺七寸という高さから自らの人生を見つめ直し、新たな光を見出す成長物語です。
上田の伝統である雨乞い祭りから始まり、宿場町の日常、情と義の交差する人々の生活が織りなす物語の舞台は、歴史の薫り高い信州の地。祖母の言葉を胸に、おさんが歩んだ一歩一歩は、読者にとっても新鮮な驚きと勇気の旅路となるでしょう。
ひとりの女性が自己を受け入れ、真実の愛と幸福をつかむまでの過程を愛おしく描いた本作。『五尺七寸の光』は、おさんが心に秘めたあたたかな光を求める全ての人々へ贈る、心温まるストーリーです。
カッパのレイライン初巡礼(執筆者:山木敦)
カッパの世界にも日常は存在する。塩田平で生活するカッパ一家の日常と冒険を描いた『カッパのレイライン初巡礼』では、知られざるカッパの生態と、古き良き日本の自然あふれる情景が織り成すストーリーが展開されます。
主人公の子カッパ・たつ坊は、池の外の世界への興味に満ちあふれた好奇心旺盛なキャラクター。どこにでもいそうな子どものひたむきな想いをカッパという非現実的存在を通じて描き出しています。世代を超えて、心温まる親子の絆と成長の物語があなたを待っています。
冬至の日、レイライン上にある信濃国分寺や生島足島神社、安楽寺などを巡礼することとなったたつ坊とお父さんカッパ。お母さんカッパの期待を背負い、彼らが出会う不思議な出来事や、人間界の文化との交流は、読者に新鮮な驚きを与えてくれます。たつ坊が見て学ぶ神社仏閣の歴史や、レイライン上に隠された秘密は、私たちにとっても非常に興味深いトピックです。
しかし、親子の巡礼は思わぬ波乱に満ちたものとなります。団子屋でのご当地エピソードや、馬を引きずる騒動は、典型的なカッパのイタズラが絡むコミカルな展開を生み出しています。たつ坊とお父さんカッパのチャーミングなユーモアにあふれたやりとりには、思わず微笑まずにはいられないでしょう。
『カッパのレイライン初巡礼』は、日本の美しい自然と伝統を背景にした一風変わった家族旅行の物語として読者を不思議な世界へと誘います。カッパが散策する神秘的なエリアの中で巻き起こる冒険に是非ご期待ください。
シン説・舌喰池異聞(執筆者:山木敦)
『シン説・舌喰池異聞』は、農民とため池、そして一つの村の結びつきを描いた物語です。主人公おりんは、亡き母に代わって一家を支え、村人から愛される存在。しかし、ため池の水漏れを防ぐための人柱の儀式に巻き込まれ、彼女の運命は暗転してしまいます。
この物語で描かれるのは、絶体絶命の窮地に立たされたおりんへの村人たちの温かい支援と、犠牲を回避しようとする知恵。そして、おりんを救うために村人たちがたくらむ妙案が展開します。子どもから大人までが協力し合う姿は、農村社会の結束力の強さと、互いを慈しむ心を感じさせます。
一方で、おりんを心から気づかう幼なじみの竜太の健気さもこの物語の中心。過酷な状況の中でもひたむきに愛を貫こうとする姿は、読み手の心を打ちます。
この物語を読むことで、生きとし生けるものへの敬愛と、人と人との深い絆の大切さを改めて感じ取ることができるでしょう。信州上田という土地の豊かな文化と歴史を背景にすえつつ、一人の女性の人生と村の未来をあたたかく見守る『シン説・舌喰池異聞』は、多くの人々に勇気と希望を与える物語です。
神と仏のよもやま話(執筆者:岡沼美樹恵)
夜空に星が煌めく冬至の夜、猫の姿をした神仏たちが密かに集い、人々の願いや日々の暮らしについて語り合います。『神と仏のよもやま話』は、上田市を舞台に、神社と寺院にまつわる愛らしい神仏たちの交流を描く珠玉の短編です。
信濃国分寺の薬師如来、生島足島神社の生島大神と足島大神、そして安楽寺の大日如来といった神仏が、出雲から帰ってくれば猫に化けて夏至と冬至のミーティングを開く「ご近所のコミュニティ」は、まるでおとぎ話のような情景を紡ぎ出します。
この神々が語るのは、人気YouTuberを夢見る若者や病に倒れた母親への息子の感動的な願い、そして東京での厳しい現実に直面した地方出身の女子大生の奮闘など、人々の抱えるさまざまな悩みとその答え。さりげないアドバイスや、ふとした後押しが今にも届きそうな瞬間が描かれています。
読者は彼らの静かな会話の間に、健康で平和な暮らしを願う人々の姿を見ることでしょう。四匹の猫が交わす和やかでありながら重みのある言葉は、考えさせられるものがあります。『神と仏のよもやま話』を通して、日常生活に隠された小さな神話を発見し、神秘への敬意を新たにするお話です。必ずやあなたの心にも神々の言葉が響くはずです。
グランパのバケットリスト(執筆者:岡沼美樹恵)
温かな夏の光の中で刻まれる、一人の女性と彼女の祖父の愛と記憶。
『グランパのバケットリスト』では、失った祖父への想いを糧に、コルビー・ユキコ・サカグチが自らのルーツを求めて旅立ちます。爽やかなハワイから遠く離れた、祖父が懐かしんだ故郷、日本の上田市。そこで彼女は、かつての祖父の夢と、自らの新たな絆を見つけるための旅に出ます。喪失と再発見が交差する一つの約束、それはグランパが残したバケットリストから始めた、心温まる人生の旅路です。
この物語には、祖父との別れから新しい出会い、そして自己発見へと続く一連の出来事が丁寧に描かれています。失意の中で見つけた祖父の「やりたかったことリスト」と、それを叶えるために足を運んだ小さな町での心の交流がコルビーを変えていきます。この静かで感動的なストーリーは、過去と現在、悲しみと愛情が織り成す家族の絆の物語を読むものに優しく語りかけます。あなたも『グランパのバケットリスト』を手に取り、グランパとコルビー、そして上田が紡ぐ物語の一部を体験してみませんか?
円盤が来た日(執筆者:秦野邦彦)
未知なる宇宙とその可能性を探究する『円盤が来た日』は、広大な宇宙に存在する知的文明を巡る壮大な物語と、地球とそれを取り巻く日常の奇跡を描きます。陽ノ宮碧という名の若者が、都会の喧騒を離れて帰郷した際に訪れた異常事態は、彼の人生を一変させる出来事でした。
上田市という自然豊かな町を舞台に、碧は映画サークルの部員たちと、地球外生命体との驚くべき遭遇を果たします。事態は早急に対応を要するものであり、純粋に心配したり、SF好きを刺激するようなわくわくする展開が待ち受けています。しかし、そこにはただのSF冒険譚では終わらない、ほのぼのとした人間ドラマが隠されています。
碧の故郷・上田市には、実はレイラインと呼ばれる特別なエネルギーラインが存在し、その地で生活する人々は知らず知らずのうちにその恩恵を受けていました。物語は、SFの世界を飛び出し、家族、地域との繋がりや、上田市に伝わる歴史と文化、人々の気持ち、そして碧の成長と夢を描きます。
冒頭で紹介される宇宙規模の驚異と比較し、地元という小宇宙の中で揺れる碧の心情には、誰もが感情移入せずにはいられません。円盤という一大事件をきっかけに、自分の居場所を見つめ直し、新たな定義をつけていく碧の姿は、まさに青春の一コマです。
あなたがもし宇宙の神秘に魅せられ、地球という星での暮らしや人との繋がりを改めて大切にしたいと願うなら、この『円盤が来た日』はあなたにとって最適なエンターテイメントです。
松茸が教えてくれたこと(執筆者:秦野邦彦)
家族との絆、郷土愛、そして生きる意味を探求する物語『松茸が教えてくれたこと』。
主人公の武雄は、幼い頃から何ごとも穏やかで、特に食べ物に関して偏りがなかった人物。五歳のある日、松茸ごはんの香りに目覚めてしまう武雄の舌と心。これが、彼の人生を決定づける奇跡の始まりでした。
成長し、知識を深めるうちに、武雄は松茸に対する情熱をさらに燃やすようになります。不思議な縁が彼を松茸の本場、上田市へと導くのです。そこで年に一度、神聖な恵みをふんだんに味わいながら、彼は地域への理解を深めていきます。
しかし、この物語の真の魅力は、食材としての松茸だけでは終わりません。武雄の成長過程を通じ、家族の大切さや郷土に対する新たな魅力の発見まで、読み手にさまざまな想いを喚起させます。そして、彼が若い甥と松茸狩りをする中で、未来への橋をかける大切な一歩を踏み出すのです。
『松茸が教えてくれたこと』は、一人の男の成長と自己発見を描きながら、私たちにとって本当に大切なものが何かを教えてくれます。心温まる物語を通じて、あなたも自分自身と向き合うきっかけを見つけることでしょう。松茸の香りと共に、武雄の旅と成長の軌跡を追体験してみてください。
春休みは忙しい(執筆者:橋本達典)
都市伝説のようなレイラインを軸に、親子の絆と軽やかなスリルを織り交ぜた物語『春休みは忙しい』。
主人公は生真面目で、探偵のような鋭い観察力と好奇心旺盛な中学生、ノブシゲ。ある日、父親の行動が怪しくなり、彼はスパイ映画さながらのタイミングで父を尾行します。その先にあったのは、レイライン上に存在する古い街、上田での思いがけない昔話と再会でした。
物語は、ダイナミックに進化し、永遠の謎に満ちたレイラインにまつわるエピソードへと展開します。好奇心と偶然がノブシゲと周囲の人々を結びつけ、読者は上田の風景の中で次々と起こる出来事に心躍らせます。
レイラインに沿って登場する、それぞれの神社や遺跡が語る深い歴史と物語は、読者にとって新たな発見の連続です。そして、スリルの中にも家族の大切さや、友情と青春の思い出を教えてくれる温かな一面が感じられます。
あなたもこの『春休みは忙しい』を手に取り、レイラインがもたらす魅力的な秘密を解き明かす冒険に出かけてみてはいかがでしょうか。息子と父、そして昔ながらの友人との絆が紡ぎだす心温まるストーリーが、あなたを待っています。
想い出がいっぱい(執筆者:橋本達典)
三軒茶屋の喧騒を抜け出し、懐かしさと新たな門出が交錯する『想い出がいっぱい』。
親からの過保護な電話に心底うんざりしながらも、実はその気遣いが愛おしいシュウイチ。彼の次の一歩は、故郷・上田に決っていました。東京での終わりと上田での始まり—二つの世界は込み上げる感慨深い“想い出”に満ちています。
本作は、成熟した中年男性が、青春時代の未練と現在の親子関係を丹念にひも解いていきます。親のくれた無数の電話、ささやかながらも心を温める故郷との再会、そして少しずつ大人になることの意味。彼の歩みは、長野の映画館や昔懐かしい喫茶店の風景と共に、読者に心温まる旅を提供します。大切な人への献身と、長野の地域性を巧みに織り交ぜた本作は、希望と郷愁を持ったどこか温かみのある物語です。
幼い頃の自分を受け入れ、過ぎ去った時間を美しいものとして噛みしめる—『想い出がいっぱい』は、そんな成長の物語を紡ぎます。あなたもこの物語を読み、過去を振り返りつつ、未来に一歩を踏み出す勇気をもらえるはずです。
短編小説の利用方法(著作権の取り扱いについて)
個人利用(団体含む)・教育利用の場合
ご自由にお使いいただけます。以下は著作権者である上田市日本遺産推進協議会の許可なく行ってよい活動の例です。これらに限らず、非営利活動であればご自由にご利用ください。
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- 演劇や紙芝居等の脚本として利用する。
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- 個人で楽しむために印刷する。
- 無償で配布するために複製する。
- 朗読会(参加無料のものに限る。)や読み聞かせ等に利用する。
- 音読素材、教材に利用する。
商用利用の場合
製本出版、漫画化、アニメ化、映画化、オーディオブック化、その他の営利目的で行う二次利用については、製作段階又は収益が発生した段階で著作権者である上田市日本遺産推進協議会及び執筆者に使用料・印税等が発生しますので、事前にご相談ください。
上田市日本遺産推進協議会は、多くの事業者様に積極的に商用利用していただきたいため、二次利用の場合の使用料・印税等については極力抑える方向で調整したいと考えています。